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今年の読書(30)『水曜日の凱歌』乃南アサ(新潮文庫)

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今年の読書(30)『水曜日の凱...
平成最後の月に、隠れた昭和の敗戦に関する秘部に触れた作品と巡り合えました。本書『水曜日の凱歌』は、芸術選奨文部科学大臣賞受賞作品で、文庫本で715ページの力作です。

昭和20年8月15日水曜日は、主人公<二宮鈴子>の満14歳の誕生日でした。父が運送会社を営む二宮家は比較的裕福な家庭でしたが、父は交通事故で亡くなり、疎開先から東京・本庶に戻ってきた母<つたゑ>と<鈴子>は、焼野原のなか、父の友人<宮下>の世話で住居を確保します。

<宮下>は、進駐軍の性暴力に備えるために日本政府が「特殊慰安施設」を造るのに際して、英語のできる<つたゑ>を慰安所の通訳としての仕事を斡旋します。<つたゑ>は<鈴子>と慰安所となる老舗旅館に移住、14歳の<鈴子>には、髪を切り男の子の姿に変装させての生活が始まります。GHQが公的売春に否定的だったため、この施設は閉鎖され、熱海のキャバレーへと移り住みます。

やがて<つたゑ>は、進駐軍の<デビッド中佐>の愛人となり、豊かな生活を享受しますが、<鈴子>は、<宮下>・<デヴィッド中佐>と男を渡り歩く母の生き方に反発を感じ始めます。

敗戦後、生き抜いていかなければならない女性として、母としての<つたゑ>の行動を思春期の少女<鈴子>の目線を通して、国家と権力、戦争と平和に切り込んだ戦後の日本の現代史として、社会性を持った作品だと思います。

本書を読み終わるとタイトルの意味が、性に関する重い題材にも関わらず、その後の希望が持てそうな読後感を与えてくれています。
#ブログ #文庫本 #読書

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