今年の読書(85)『すかたん』朝井まかて(講談社文庫)
6月
19日
本書も植物と関係する大阪天満の青物問屋を舞台に繰り広げられる、江戸時代を背景とする物語です。
主人公<知里>は饅頭屋の娘でしたが、美濃岩村藩の江戸詰め藩士の<三好数馬>と夫婦になりますが、大阪の赴任先で<数馬>は突然の病で亡くなってしまいます。
後家となった<知里>は、手習いの見習いで長屋生活を始めますが、江戸の気風の違う大阪の世界に戸惑うばかりで、ある日泥棒に入られ、夫との思い出の花簪まで盗られてしまいます。
家賃を払うこともできずに途方に暮れているとき、青物問屋「河内屋」の若旦那<清太郎>に声を掛けられ、奥女中として<清太郎>の母<志乃>に仕えることになります。
若旦那の<清太郎>は遊び人で数々のトラブルを起こし、父親から廃嫡を言い渡される立場に追いやられますが、いつしか<知里>は若旦那の行動に惹かれていくのでした。
本書も蔬菜として地場の野菜が数々登場してきますし、小気味よい大阪弁の展開(著者は大阪生まれ)で、大いに楽しめた一冊です。