今年の読書(49)『ぶどうのなみだ』三島有紀子(パルコ出版)
4月
9日
本書は『繕い裁つ人』の前作として、昨年10月に公開された映画『ぶどうのなみだ』の原作本になります。
6歳の時に母親と別れた<エリカ>は現在34歳、日常生活から逃げ出すようにある日一切のモノを捨て、母の残してくれたアンモナイトの化石の魅力に魅かれるように、ヨーロッパ各地にキャンピングカーで回り、ひとつ化石を見つけるとまた別の場所へと移動する生活を続けていました。
次回はどこに行こうかと地球儀を回して指で止めますと、そこは北海道の空知(ソラチ)という場所でした。
<エリカ>の探索する場所は、地元では「運命の樹」と呼ばれる大木が立ち、願い事を聞き入れてくれる時には強い風が吹くといわれ、その「運命の樹」を挟むようにワイン造りに没頭している36歳の兄<アオ>と、小麦作りをしている24歳の弟<ロク>達と知り会うことになり、彼女は自分の人生の転換期を迎えます。
父と息子たち、母と娘といったそれぞれの家族の歴史を通して、人生に本当に必要なモノは何かを、読み手の心に深く知らしめる一冊でした。