書籍のタイトル通り、幽霊4人が主人公で、自殺志願者たちを助けるお話です。
それぞれの理由で自殺した4人ですが、天国までたどり着けず、神様が「下界に降りて100人の自殺志願者を救えば、天国に行かせてあげる」という筋書きです。
警察庁の資料によりますと、1998(平成10)年には24000人の自殺者数でしたが、翌年の1999(平成11)年には33000人を超え、以後昨年度まで毎年3万人以上の人が自殺で亡くなられています。
経済的な理由、病気、ローン問題、受験等、それぞれ問題を抱えた自殺志願者をいかに助けてゆくのか、読みながら小説というよりも、世相をよく表した社会分析書だとおもいました。
お正月に向かない話題かもしれませんが、年の始めだからこそ、手を差し伸べられる温かい社会環境を、望みたいところです。
昨年末に買いそろえた <寝正月用の書籍> 、今年最初の読み出しとしては、ミステリーファンですので『キングの死』を選びました。
著者は3作目の『川は静かに流れる』で、2010年の英国推理作家協会最優秀賞を受賞しています。
13歳の少年を主人公に据えて、行方不明になった妹の捜査を進める物語ですが、受賞作の貫禄十分の内容でした。
ミステリーに限らず、本来は作家の発表年代順に読み継ぐのが王道だとは思いますが、えてして文庫本などでは発表年代が後先になる場合もあり、読み手側としてがっかりします。
今回は、あえてデビュー作の1作目にさかのぼって読んでみました。
親子二代の弁護士の家庭を中心に話しは展開します。先代の父親は弁護士としてはやり手でしたが、射殺死体で発見され、主人公の弁護士を中心にその妹、父親のいいなりで結婚した家庭、昔馴染みの女性との不倫等の伏線を散りばめながら、自分自身の人生観を見つめ直す結末へと一気に読ませます。
600ページを超える作品ですが、3作目で協会賞を受賞する力量を感じさせるストリー展開、面白く読み終わりました。
総合病院の外科医として勤務している<司馬健吾>は、当直の日に「飛び込み出産」の女性の緊急手術を施しますが、妊婦の<有馬三恵>は帝王切開中に突然死亡、新生児は未熟児として産科に預けられます。
手術後、看護師長の<春日井>は突然男に襲われ、「死んだ女のことは黙っていろ」と脅され、<司馬>が自宅に戻ると手術に立ち会った同棲相手の<平井瑤子>も、男に脅しをかけられていました。
<司馬>は<大久保>院長から手術ミスの責任を取らされ、病院を去ることになりますが、仕事先が決まらないなか、妊婦の血液型が珍しいことに気が付き、「代理出産」という疑惑にたどり着いていきます。
経営難の病院を背景に、医療ミスの隠蔽に合わせる巧みな策略と意外な結末に、最後まで緊張感を持ち続けながら、目が離せない一冊でした。
「ススキノ」で、便利屋として生計を立てている<僕>を主人公とする<ススキノ探偵>シリーズの第8作目が本書です。
相変わらず雑多な仕事をこなしているとき、退職した平刑事の<種谷>から、2年前に起こった「あいの里女子高生失踪事件」の協力を求められます。
退職した<種谷>は、当時のアルバイト先の花屋の経営者であった<檜垣紅比古>を疑い続けていますが決定的な証拠がなく、<俺>に<種谷>に近づき証拠となる死体を見つけてこいと頼まれます。
馴染のバー<ケラー・オカダ>で<種谷>に近づきますが、なぜか彼は<小椋良一>と名乗っていました。
行方不明の<邑隅エリカ>のことが気になる<俺>は、虫唾が走る<小椋(=檜垣)>と酒を飲み歩きますが、彼は<俺>が最も嫌いな性格の持ち主でした。
このシリーズではお馴染みの脇役たちも健在で、冬の「ススキノ」の街を舞台に、辣腕を振るう<俺>の行動に溜飲を下げられる一冊でした。
お正月休みだからといって特別な予定もなく、寝正月になりそうで、ゆっくりとした読書タイムで時間つぶしです。
ここ数日本屋さんを回り、気になる本を準備しました。
発行されて少し古いのもありますが、乱読そのものですが、好きなミステリーを中心に、それぞれに興味を持つ書籍を選んできました。
デボラ・クロンビーの『警視の〇〇』シリーズは第11作目で、毎回楽しみなシリーズです。
『事件現場は花ざかり』は、田舎町で園芸家として開業した女性店主が主人公で、好きな植物の世界が楽しめそうです。
『情熱革命』の著者樫野孝人氏は神戸市出身の実業家で、前回の神戸市長選挙に立候補、落選した経歴の持ち主です。
今年も150冊を超える書籍を読破しましたが、来年もなんとか2~3日に1冊ペースは守りたいものです。
定町廻り同心<野村平左衛門>25歳の妻<瑠以>20才は、小野派一刀流の使い手で剣術(やっとこ)小町と言われ、10歳のときに夜盗<もがりの武蔵>一派に両親を殺されています。
野村家では、姑・小姑のいじめに遭いながらも、献身的に夫に仕えていますが、裏稼業として元締め<源内>の下で「仕事人」としての裏の顔を持っています。
夫<平左衛門>は「与太郎同心」・「盆暗同心」と陰口をたたかれrていますが、生真面目さが目立つ所作で自宅謹慎、そんなときに市中で相次いで撲殺事件が起こり、正月を迎えて火付け盗賊<遊糸の与一>の名が浮かび、<瑠以>は謹慎中の<平左衛門>に替わり、<与一>を誘い出す計略を案じます。
おしどり夫婦の内助の功にしては見事な采配で、今後自分の親を殺めた<もがりの武蔵>にたどり着くのか、興味が残る第二巻目でした。
語り手の<僕>こと<伊東二葉>は大学一年生の18歳、一人暮らしの下宿生活でまだ都会に慣れていない小心者の好人物です。
人のいい性格を見透かされたように中学1年生の<瀬川隼人>に声を掛けられ、成績優秀な彼は家庭教師など不要にもかかわらず、心配性の母親を安心させるために<二葉>を家庭教師として引き込みます。
<二葉>は平凡な学生ですが、一度目にしたものを写真のごとく瞬時に記憶に焼き付ける能力があり、推理好きの<隼人>と二人で、日常の事件を解決してゆく5篇の短篇が連作で納められています。
年若い13歳の<隼人>が推理の「先生」役で、<僕>は記憶力で<隼人>の手伝いをしながら、歴史的な名推理小説を下地とした作品が楽しめました。
『寒い国から帰ってきたスパイ』でデビューしたのが1961年、はや作家歴50年ですが、スパイ小説の第一人者として人気は衰えません。
本書の主人公は<ブルノー・サルヴァドール>、白人宣教師とコンゴの娘との間に生まれた28歳、通称<サルヴォ>というスワヒリ語をはじめアフリカ諸国の通訳を専門にしており、彼の視点から物語が語られていきます。
イギリス政府の秘密会議の通訳者として<サルヴォ>は、国防省の<ミスター・アンダーソン>の命である孤島に出向きますが、そこでの会議はコンゴ民主共和国の平和を目指す会議でしたが、裏側はクーデターを起しコンゴの鉱山資源を手中に入れようとするシンジケートの陰謀が働いていました。
会議が終ると録音テープやメモ帳は破棄されるところ、<サルヴォ>は秘密裏に持ち帰り、政府筋の人物たちに陰謀を伝えますが誰も彼の話を信用しません。
アフリカの患者の通訳で知り会いになったコンゴ出身の看護師の<ハンナ>と恋仲になり、二人して陰謀を阻止しようとするのですが・・・。
東コンゴ情勢を背景に、サスペンスタッチの軽快な展開が繰り広げられる国際陰謀小説が楽しめた一冊でした。
ある事件がきっかけで刑事を辞職した<須賀原>は、レンタルビデオ店で働き、社会から身を隠すようにつつましい生活をしています。
<須賀原>はホラービデオのコーナーで、連日涙を流す少年<橋口明夫>を気にしていましたが、ある日横断歩道で<明夫>を見つけ赤信号に気づかずに渡りかけようとする彼の手を引き寄せた瞬間、交通事故にあった老婆の幽霊を見てしまいます。
<明夫>は子供の頃からこの世に留まっている幽霊を姿をみる能力があり、<明夫>は彼に触れているときにだけ幽霊を見ることができます。
本書には5篇の物語が納められており、自分が亡くなった交差点で孫と同じ年恰好の子供に注意し続ける老婆、人間に虐待されながらも人との生活が恋しい子犬、自ら7歳で死を選んだものの残された弟の将来に気をもんでいる少女、エゴイストで嘘つきの派遣社員の女性、そして<須賀原>自身の背負っている過去の事件等、<明夫>と二人でこの世に未練を残さないように問題を解決していきます。
どの物語も切なくて悲しい内容ですが、どの物語も、何らかの希望を感じさせてくれるほんのりとした余韻が心に残りました。
7話の短篇が収録されていますが、タイトル通り探偵役として登場するのは、「櫃洗(ひつあらい)市役所市民サービス課臨時出張所」と張り紙された場所に座る、両腕に黒い<腕貫>をした奇妙な男で、名前はありません。
大学内や病院、さびれた商店街の一角、警察署等、奇抜な場所に現れ、悩める市民たちの謎に助言を与え、時間がくれば「はい、次の方」と話しを途中で終わらせ、解決は相談者側にゆだねるという形で物語は進んでいきます。
みずから現場に出向くことなく、相談された内容だけで安楽椅子探偵よろしく謎を解明、ユーモアにあふれたミステリーが楽しめる一冊でした。
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