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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(71)『夏光』乾ルカ(文春文庫)

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著者は1970年札幌市に生まれ、短大卒業後、銀行員や官庁の臨時職員を経て、2006年に短篇『夏光(なつひかり)』で第86回オール讀物新人賞を受賞後、作家デビューされています。

この『夏光』は6篇の短篇から構成されいます。
初めて著者の作品を読みましたが、どのようなコメントを書こうかと悩んでしまいました。
内容がないという意味ではなく、どの短篇も素晴らしく、圧倒的な面白さと人間観察力の目線のつけ方に、言葉が出ません。

解説者の<香川ニ三郎>氏は、<”恐怖(ホラー)の女王” 降臨!>と、解説文の一行目に書かれています。
確かにジャンル的には「ホラー」的な要素が強いのですが、軽いノリでの使い方は控えたいレベルの高さの構成力です。

調べますと、この短篇集を含めてまだ5冊の著作しかないようですが、今後確実に頭角を現してくる作家だと感じました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(70)『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)

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今年の読書(70)『謎解きはデ...
推理小説の短篇が、6篇収められています。
本格的な長編の推理小説ではなく、登場人物のセリフなどにユーモアがある掛け合いと、ギャグを織り込んだミステリーに仕上がっています。

主人公は、国立署に勤める<風祭警部>32歳で、「風祭モータース」の御曹司で、銀色のジャガーを乗り回しています。
部下には<宝生麗子>が「宝生グループ」のお嬢様の身分を隠して刑事として働いています。
この二人を中心として、密室トリック重視の殺人事件に臨むという設定ですが、事件を解決するのは、<宝生麗子>の執事役の<影山>です。

タイトルの『謎解きはディナーのあとで』は、捜査を終えた<宝生麗子>が食事をしながら、執事の<影山>に状況を説明、謎解きが完成するという流れで作品が仕上がっています。

本格的な警察小説のたぐいではありませんが、<謎とフェアープレーの精神>は守られており、ヒントは文中に隠されていますので、推理小説に慣れた人には、謎解きがしやすいかもしれません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(69)『クジラの彼』有川浩(角川文庫)

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今年の読書(69)『クジラの彼...
著者自らが「ベタ甘ラブロマ」という言葉で表現されている通り、男女の恋物語の短篇6篇が収められています。
しかも、この6編はどれも国防を預かる「自衛隊」を舞台に繰り広げられており、<自衛隊ラブコメシリーズ>の第一弾です。

表題の「クジラ」とは、海上自衛隊の潜水艦を表す言葉で、隠密行動で、一度出航しますと何カ月も帰還することなく、家族にも連絡が出来ない中での恋愛を、上手くまとめあげています。

どの作品も、片方か両方が「自衛隊」の立場の人間で、特殊な生活環境の中での恋愛を、ラブコメディータッチで面白く読ませてくれる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(68)『あなたに逢えてよかった』新堂冬樹(角川文庫)

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今年の読書(68)『あなたに逢...
MCI(Mild Cognitive Impairment)、日本語訳では軽度認知機能障害の患者を相手に、記憶を取り戻す治療を手助けをしている作業療法士の<星純也>24歳と、紅茶専門店に勤める2歳下の<吾妻夏陽>の二人の恋愛物語です。

紅茶専門店「ブローニュ」に、彼が紅茶を飲みに来るのをきっかけに、恋人同士として付き合いが始まりますが、彼自身が「MCI」を発病してしまます。

自分の愛する人の記憶がなくなってゆく中で、夏陽はけなげに記憶を取り戻すべく手助けをしてゆきますが、ある日突然と彼は姿を隠してしまいます。
主治医や同僚、弟と複雑な人間関係を絡ませながら、ベタな純愛小説とは一味違う構成力で持って、一気に最後まで読ませてくれました。

後半部分で明らかにされてゆく二人の運命的な出会いの結末は意外性をもたせ、この先二人はどうなるのかは、読み手側にゆだねられています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(67)『孫の力』島泰三(中公新書)

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今年の読書(67)『孫の力』島...
一冊の書物を手にするには、偶然という場合も多々あります。
著者には悪いのですが、この一冊もそうでした。

わたしの早とちりで、ソフトバンクの<孫正義>氏の分析本かと思い手にしたのですが、なんと「孫(まご)」に関する内容でした。
これも何かの縁かなと、読んでみました。

著者は、ニホンザルやアイアをはじめ野生動物の研究者ですので、自分の孫の成長を、同じ手法で観察した貴重な記録が綴られています。
動物学者らしく、孫と祖父母の関係は、単なる生物学的な関係を超えた。社会的・文化的な意味合いを分析されています。

少しばかりお孫さんの自慢的な記述も感じますが、目に入れても痛くないという孫の存在、単なる「子ども」として一段下に見るのが間違っているという考え方には、共感を持ちます。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(66)『ながい眠り』ヒラリー・ウォー(創元推理文庫)

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今年の読書(66)『ながい眠り...
作品自体は1959年に発行された警察(推理)小説ですが、<幻の傑作、新訳決定版>ということで読んでみました。

ストックフォード警察署長の<フェローズ>を主人公に、3人ほどの部下を引き連れて難事件を解決する、シリーズの第一作目です。

不動産会社が、金庫の現金は盗まれずに、賃貸契約書のファイルだけが盗難に遭い、やがて同社の管理する貸家から胴体だけの女性の柄死体が発見されます。

殺された女性の身元の確定もできず、これこそはと思われたわずかな手がかりも実ることなく、捜査は難航を極めます。
理論派の部下と対照的に、<フェローズ>はわずかな証拠に基づき、推理を重ねてゆくタイプとして、最後まで捜査を諦めません。

著者自らが述べているように、<謎とフェアープレイの精神>で書かれていますので、読み終わりますと「なるほど」と納得します。
小説の第1ページに出てくる挿絵としての「カレンダー」の意味が、ラスト3行のどんでん返しに絡んでくるのは、さすがとしか言いようがありません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(65)『グラデーション』永井するみ(光文社文庫)

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今年の読書(65)『グラデーシ...
14歳の少女<桂真紀>を主人公に、23歳になるまでの10年間を、丁寧に描いた8章からなる小説です。

少女から大人の入り口に差しかかるまでの出来事が、友達関係、親子関係、思いを寄せる男性関係の中で、これといった結末もなくなだらかに語られてゆきます。

「グラデーション」は、色彩の濃淡の変化、物事の段階的な変化に対応した言葉ですが、女の子としてどこにでもありそうな出来事の積み重ねを、心の成長とともに書き込まれています。

主人公の<真紀>は、美術大学に進み、美術の教職を目指しますが、残念ながら教師の道は狭き門で浪人となり、友人の絵画教室の手伝いをする現状で終わりますが、この先どのような人生の「グラデーション」を積み重ねて着くのかは、読書の想像の世界です。

多感な少女の心の動きを、それとなく感じさせてくれた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(64)『孤舟(こしゅう)』渡辺淳一(集英社)

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今年の読書(64)『孤舟(こし...
大手広告会社を60歳で定年退職した大谷威一郎の家庭を中心に、その家庭内の夫婦関係、長男と長女二人の子供たちとの親子関係を、淡々と積み重ねていく表現で構成されています。

威一郎の妻は、専業主婦であるが故、毎日会社の仕事や接待で遅くなる主人とは裏腹に、昼間は自由な生活を満喫していました。
家庭内のことは何もしない(出来ない)威一郎と、衝突するのは時間の問題でした。

サラリーマン時代が充実していた(と感じていた)人ほど、年賀状も来なくなり、部下からの連絡もなくなりますと、孤独感を味わうことになります。

第二の人生だと期待していたものの、いざ時間的に余裕が出来ても、金銭的には年金生活にならざるを得ない現状、身につまされる人も多いのではないでしょうか。

仕事一筋、趣味もなく時間をつぶせない人ほど退職後病気になりやすいようで、さしずめ「ブログル」で知的発散を楽しまれているみなさんには、縁遠い話しのようです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(63)『電車屋赤城』山田深夜(角川文庫)

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今年の読書(63)『電車屋赤城...
久々に「エンターティメント」な小説を読んだという、感動の一冊でした。
鉄道オタクまではいきませんが、鉄道好き、機械好きな方には、たまらない小説だと思います。

私鉄「神奈川電鉄」(通商「神電」)の車両検査部門を舞台に、下請け業者の「エース工業」の社長たちを通して、車両整備に誇りと夢をかける男たちの人間ドラマが展開されていきます。

<赤城>は、自分の過去を語ることもなく、それぞれに登場する人物たちに対して、人間として職人としての矜持を示しながら、難問解決に立ち向かう姿勢を崩しません。

高速化と電子制御化が進むなか、職人技として腕を振るえる時代は終焉を迎えつつありますが、「プロ」としての仕事へのこだわりを改めて感じさせてくれました。

7章からなる構成ですが、一遍一遍どれも感動モノのお話ばかりで、お勧めです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(62)『季節風 秋』重松清(文春文庫)

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今年の読書(62)『季節風 秋...
『季節風』というタイトルで、<冬・春・夏・秋>と四部作が出ていました。
どれも12の短篇が収められています。一番新しい『季節風 秋』を読んでみました。

以前に著者の自叙伝的な 『鉄のライオン』 を読みましたが、いい味わいの短篇集だったので、今回も期待しながら読んでみました。

親子関係、夫婦関係、幼馴染等、人間生活のどこにでも起こりえるえる物語ですが、実に味わい深く読めました。
「あとがき」に著者自らが書かれています、<「おまえはどんなものを書いているんだ?」と問われたなら、きっと「これを読んでくれればわかります」と、この四冊を差し出すだろう>との言葉通り、まさに著者の人間を観る視点が浮き彫りになる内容でした。

・・・肩を抱き寄せて。「長生きしてや、お父ちゃん」-ふるさとの言葉で言った。
・・・子どもたちは、これから長い人生を、勝ったり負けたりを繰り返して生きていく。運動会のようなさっぱりした勝負は、そう多くはないだろう。
・・・おとなには、わかっても言わないことがあるんだよ、うん。言ってもつらくなるだけだったら、言わないほうがいい。

さりげなく各短篇に出てくる文章に、著者の思い入れがにじみ出ています。
ほのぼのとしながらも胸が熱くなる人間ドラマ、ぜひ手にしていただきたい一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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