「USスチール」買収の〈トランプリスク〉
6月
15日
14日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が実現へ大きな節目を迎えました。ただ、日本製鉄はUSスチールの普通株式を100%取得すると明らかにした一方で、米政府は買収の枠組みに触れてません。<トランプ米大統領>が強調してきたUSスチールの「支配」が経営の足かせになりかねず、「トランプリスク」がくすぶり続けそうです。
<トランプ米大統領>はこれまで、USスチールの完全子会社化を認めないと主張してきました。日本製鉄による「買収」ではなく「投資」と繰り返してきています。支持者には計画の詳細を語らず、「USスチールは米国の企業として残る」と強調。来年秋の中間選挙を念頭に、支持者をつなぎ留めたい思惑が感じられます。
両社は声明で、<トランプ大統領>に対し、「リーダーシップと力強い支援に感謝する」と表明。「大統領が歴史的なパートナーシップ(提携)を承認した」と記し、「買収」と表現しない配慮を見せています。ただ、関税政策を二転三転させる同氏の出方は読めず、買収の完了まで不安は消えません。
13日、<トランプ大統領>は日本製鉄が米政府と国家安全保障協定を結ぶことを条件に、<バイデン前大統領>による買収中止命令を撤回する大統領令に署名した。これに基づき、経営の重要事項に拒否権を与える「黄金株」を米政府が保有し、USスチールを「支配」できることになります。
大統領令にはさらに、国家安保のために必要と判断すれば、追加で命令を出す権限があることも明記しています。米政府高官は「USスチールは国家・経済安保の重要な要素として守られる」と強調。政府による「介入」が日本製鉄による経営の自由度を制約するリスクが残ります。