単行本として、2022年10月24日に刊行され、文庫本として、2025年1月10日に発売されています。刊行当時すぐに読んでおれば、感動もひとしおだったのではないかなと感じる内容でした。
主な主人公3人が登場、未知のウイルスとの戦いに巻き込まれ、戦場に身を投じた主人公たちの目線でのコロナ物語です。
大学病院の勤務医で、呼吸器内科を専門とする「椎名梓」は、彼女はシングルマザーとして、男の児を育てながら、基礎疾患のある高齢の母と同居していました。コロナ病棟の担当者として、最前線に立つことになり、ホテル暮らしで帰宅できない状況が続きます
同じ病院の救急部に勤務する20代の女性看護師「硲瑠璃子」は、結婚目前の彼氏「定岡彰」と同棲中ですが、独身であるがゆえに、コロナ病棟での勤務を命じられます。
そして、70代の開業医「長峰邦昭」は、地域に根差した町医者として、開業から30年が過ぎ、息子にはそろそろ引退を考えるように勧められていますが、コロナ禍で思い掛けず、高齢で持病もある自身の感染を恐れながらも、町医者の使命感で現場に立つことを決意します。
コロナ禍が進んでいく中、あのとき医療の現場では何が起こっていたのか、時系列でリアルな現場の描写が進んでいきます。立場の違う 3人は、それぞれの立場に苦悩しながら、医療従事者としての自己犠牲を強いられていくのかノンフィクションかと思わせる現場の状況と共に描かれていきます。
全人類が経験したあの未曾有の災厄の果てに見いだされる希望とは。自らも現役医師として現場に立ち続けたからこそ描き出せた久々に感動した(525ページ)の人間ドラマの一冊でした。