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今年の読書(75)『駅の名は夜明け』髙田郁(双葉文庫)

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今年の読書(75)『駅の名は夜...
本書『駅の名は夜明け 軌道春秋Ⅱ』は、短編集『ふるさと銀河線 軌道春秋』の続編として、9篇の短編集が収められ、2022年10月16日に文庫本として発売されています。

今回も、ほっこりとする群像劇の『ミニシアター』を含み、思わず涙する感動の、夫婦・親子の家族ドラマ9編が収められています。

◆『トラムに乗って』
7歳で亡くなった娘のことが忘れられず、新婚旅行で楽しい思い出があり、娘に語っていたウィーンの街へ離婚を覚悟して旅立った「真由子」でした。「私も行ってみたい」という生前の娘の言葉に応えるためにウィーン街へ。そのウィーンの街を一周するトラム(路面電車)が物語に彩りを加えて物語が展開します。
◆『黄昏時のモカ』
前『トラムに乗って』で、空港で出会った72歳老婦人「美津子」が主人公。夫と金婚記念に訪れようと思っていましたが、その夫は5年前に亡くなり一人で訪れたウィーンの街での出来事。親切に観光案内をしてくれる青年「クラウス」を、何か企む詐欺師ではないかと思いながらも、心を通い合わせることになります。
◆『途中下車』
中学から高校と「無視」される〈シカト〉のイジメに悩む女子学生「亜季」は、父が亡くなったこともあり、我慢の日々から脱出したく北海道の祖父母の元に行って新しい高校に転校します。その転校の初日、「無視」されたイジメがフラッシュバックして途中下車。そこで出会った昔国鉄職員で今はレストラン「駅舎」を営む2人の男性に出会って話を聞いてもらう。「目的地に行くために必要な途中下車もあるさ。疲れたら、降りていいんだよ。」「次の列車は、必ず来るからね。」と、前向きに進む希望の言葉に励まされます。
◆『子どもの世界 大人の事情』
「ふたりの心の中に氷が張ってしまって・・・」と、両親が離婚した小学4年生の少年が主人公。別れた父と語り合っていたオホーツクの海を見たくて一人で旅に出ます。旅先のレストラン「駅舎」の前の海を見て「春になったから氷は解けているよ」と父に電話。父は子供の旅先に駆けつけます。感動的な父と子の信頼関係を描いた物語。
◆『駅の名は夜明』
パーキンソン病と認知症の妻を介護する老老介護の物語。夫もまた慢性心不全を患っています。ずっと貧しかった生活、元気な時に妻が時刻表だけで旅を思い浮かべて楽しんでいた九州へ、無理心中の旅に向かいます。人生を終わらせるには、この静かな駅がいいと降りた駅の名は「夜明」。なぜかそれに光明を感じ、何事にも反応しなかった車椅子の中の妻が「おうちに帰ろう、ふたりで」という言葉に、また一緒に生きる希望を見いだします。
◆『夜明の鐘』
雨女の2人の旧友が、新神戸駅からまたまた雨女らしく台風直下の九州への旅にでます。それぞれが、それぞれの事情を抱えての再会。そんな中年女性2人の物語でした。新神戸駅らしく駅弁「ひっぱりだこ飯」の描写場面ではニタッとさせられました。
◆『ミニシアター』
列車内の変な悪臭から物語は始まる。犯人は老女がカバンに入れて持ち込んだネコ。乗客は迷惑行為を責め立てるが、老女の持ち込んだ猫の事情を知り、徐々に同情の気持ちにかわり、車掌に見つからないように、それぞれが画策する心情になる。そして車掌まで最後は粋な計らいをして物語が終わります。
◆『約束』
駅ゾバ店で働く読書好きの50歳の「久仁子」は、踏切で自殺をしようとした男を助けますが、その男は憧れの作家でした。助けたことが縁となり、やがて10歳年下のその男と結婚しますが、長続きせず2年後にまたもとの駅そばの店員に戻ります。別れた作家も生活が乱れて筆は進まず、出版社からも見放されてしまいます。2年後、作家は駅ソバ店を訪ね、再び「久仁子」と再会します。
◆『背中を押すひと』
11年前に国鉄マンだった父と喧嘩をして、俳優になると家を飛び出した「時彦」は、役者の芽が出ず大道具係をしています。医者になっている妹「路」から父が余命のない癌だと知らされ、一度でいいから家に帰って来てほしいと懇願されます。錦を飾れぬままに「今度は主役になるかも」と偽り実家に帰ります。そこでの、母との会話や、病の父との思い出の場所に父を背負って歩いたりしながら、背中の父の言葉から生きる希望を見いだします。
 
どの短編も、『 ふるさと銀河線 軌道春秋 』同様、心温まる結末で、思わず涙腺がゆるむ感動の物語です。
#ブログ #文庫本 #読書 #鉄道

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