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- 今年の読書(57)『茶筅の旗』藤原緋沙子(新潮文庫)
乱読をしていますと割とつながりのある作品と出会う機会が多いようです。<藤原緋沙子>の本書『茶筅の旗』は、徳川と豊臣の大阪冬の陣・夏の陣あたりが時代背景ですが、<澤田ふじ子>の『蛍の橋(上・下)』は徳川家勝利の後の時代が舞台でした。共に茶人「古田織部」が関わってきます。
「千利休」や「古田織部」などの茶人を主人公に据えた茶道関連の作品は多いのですが、本書は茶の元になる「碾茶」を扱う江戸初期の宇治の名家の生産業者を舞台として、お茶師を引き継いだ「朝比奈綸」を主人公に据え、戦乱の世に凜として立ち向かう、女御茶師のひたむきな半生描いています。
茶人「古田織部」を叔父として慕う朝比奈家の一人娘「綸」は父の跡を継ぎ、極上茶を仕立てる「御茶師」の修業に励んでいました。そこへ徳川・豊臣決戦近しの報がはいります。納品先として大名と縁の深い御茶師たちも出陣を迫られます。茶園を守り、生き抜くにはどちら方につくべきなのか。表題の「茶筅の旗」は、どちらにもつかないという意思表示の茶商の心を表しています。
時代に翻弄されながら茶園主たちの駆け引きを通して「綸」の茶商として、女としての成長を、お茶の生産過程を詳細に織り込みながら、史実に沿いながら描く劇的時代長篇小説として、面白く読み切りました。
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