今年の読書(67)『骨を弔う』宇佐美まこと(小学館文庫)
9月
3日
著者<宇佐美まこと>の作品として初めて手にしましたが、ち密な物語の構成と作品中にたびたび登場する著者名<宇佐美まこと>が物語の伏線に使われているというサービス精神に圧倒されました。
物語は、四国で家具職人を営む「本多豊」を主人公に据え、近くの川べりで謎の骨格標本が発掘された新聞記事を読み、30年前の小学生時代に5人の仲間で山中に骨格標本を埋めたことを思い出し、あれは本当に骨格標本だったのかの疑問を抱いた「豊」は、東京で広告代理店に勤める「大澤哲平」に会いに出向きます。
当時小学生時代を過ごした村での記憶を頼りに、県会議員の妻になっている「水野京香」、東日本大震災で家族を亡くした「田口正一」へと真相を求めて会いに出向くのですが、首謀者だった「佐藤真美子」が亡くなっているのでは真相がつかめない中、4人は昔、骨格標本を埋めたと思われる埋めた場所へと出向きます。
辺鄙な村での複雑な人間関係を底辺として、30年ぶりに真実が明かされ、登場人物たちが織りなす思わぬ場面展開で、なるほどとうならせてくれる一冊でした。私にとっては、今年の読書〈ベスト3〉の力作です。