今年の読書(65)『鉄の骨』池井戸潤(車講談社文庫)
12月
1日
中堅ゼネコンの「一松組」に入社して4年目の<富島平太>はある日突然、現場員から業務課への異動を命じられます。大学の建築学科を卒業し、入社以来現場を担当してきた<平太>にとって、営業を担当する業務課は正に畑違い。
着任早々、区役所への挨拶を命じられた<平太>は、公共工事の最低入札価格や指名入札業者の数に探りを入れる上司と役人とのやり取りに驚きを覚えます。その日の夜の飲み会で平太は、業務課が通称「談合課」と呼ばれる部署であること、談合がなければ建設業界は立ち行かないため談合は「必要悪」であることを聞かされる。
談合は本当に悪なのか、平太の苦悩の日々が始まる。時を同じくして、2000億円規模の地下鉄敷設という大型公共事業の情報が入ります。「一松組」は独自技術によりコスト的優位に入札金額を決めますが、建設業界ののしがらみから、「一松組」そして<平太>も談合に関わらざるを得なくなります。東京地検特捜部が水面下で談合の捜査を進める中、この大型公共事業の入札が始まります。
私生活では、<平太>は大学時代のテニスサークルで知り合った<野村萌>は「一松組」のメインバンクである「白水銀行」に勤務、お互いの恋愛感情も、業務の違いによりすれ違いが生じ<萌>は、上司の<園田>に惹かれていきます。
若い建築現場員の生き様に合わせ日本の建設業界の現実を骨格に小気味よい展開で物語は最後まで飽きさせることなく思わぬ結末を迎えますが、<平太>と<萌>のその後が気になりながら659ページを読み終えました。