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- 今年の読書(47)『ネコと昼寝』群ようこ(ハルキ文庫)
<群ようこ>の「れんげ荘」シリーズは、第1弾 『れんげ荘』 (2011年)、第2弾 『働かないの れんげ荘物語』 (2015年)に続き、本書『ネコと昼寝 れんげ荘物語』が第3弾となります。
10万円で、心穏やかに楽しく暮らそうと、 45歳の<キョウコ>は、大手広告代理店を早期退職し、都内の古い安アパート「れんげ荘」へ引っ越しました。数年後、<キョウコ>は相変わらず貯金を切り崩す生活を送っています。第1弾・第2弾では、ささやかな幸せを求めて、散歩、読書、刺繍、個性豊かな住人たちとの交流をとおして、穏やかに暮らす<キョウコ>が描かれています。
<キョウコ>と同じく大手広告代理店に勤務していた女性社員による過労自殺のニュースは、記憶に新しい。著者の<群ようこ>は本書(単行本)の刊行に寄せて「最後の最後まで耐えずにえいっとやめてしまうか、休職するという選択肢はなかったのかと胸が痛むけれど、<キョウコ>は働いている人であれば必ずといっていいほど考える、『こんな会社、やめてやる』を実現した」「いちばん嫌で辛いところからは逃げればいい。しかし生きることから逃げてはいけない」としています(角川春樹事務所『ランティエ』より)。
早期退職を決断する人の大半は、再就職、趣味への没頭、地方に移住して自給自足など、第2の人生への希望を持っているはずですが、<キョウコ>の場合、早期退職から数年経った現在も第2の人生の幕を開ける気配はありません。第3弾となる本書は、自分の将来や母親への不安を感じつつ、穏やかで自由な暮らしを満喫する<キョウコ>が描かれています。
「彼らはやめた時点から矢印が上に伸びていっている気がするが、自分はやめたときの点のまま」と自覚しつつ、「会社や同僚、男女の裏も表も知ってしまい、心底疲弊してしまったので、働くのはいや」。「会社をやめて結婚もせず、古い倒れそうな木造アパートに住んで、よそのお宅の飼いネコの来訪を待ちわびる中年女。自分では不幸だとも陰気だとも思っていない」のがキョウコの心境だ。
バリバリ働くキャリアウーマンから無職へ転身することで、<キョウコ>は肩身の狭い思いをし、時間を持て余し、不安を感じる。同時に、今の生活になってよかったことがいくつも心に浮かぶ。選択肢は多様にあって、より居心地の良い道に進むのも1つの手だと、本書はほのぼのと教えてくれます。
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