本書『秘密』(ポプラ社)は、「秘密」をテーマにした林真理子の短篇集です。
「お別れパーティー」「二年前の真実」「女優の恋人」「彼と彼女の過去」「土曜日の献立」「二人の秘密」「秘密」「実和子」の8作品を収録。どの作品にも、後味の苦い秘密が隠されています。
サラリーマンの<俊彦>は、女優の<衿子>を恋人に持つ。「俺は並の男ではないから、<衿子>と愛し合うことが出来る」と自分に言い聞かせ、優越感と「甘美な拷問」に酔う<俊彦>。クリスマス、<衿子>に指輪を送ろうと俊彦はホテルへ向かう。(「女優の恋人」)
2組の夫婦とシングルマザー、計5人による食事の席でのこと。<香苗>と<栗田>が元恋人同士であることは周知の事実だったが、終盤、「なんて下品なの。たった五人しかいないテーブルなのに、寝たカップルが四組もいるのよ」と<栗田>の妻が泣き出す。(「土曜日の献立」)
<常雄>は病院長という立場上、ゆすりや脅しの類は経験があった。だが、今回現れた<坂田>という男は、<常雄>の妻と不倫関係にあると言い、その証拠写真を買ってほしいと要求する。<常雄>は妻を守るため、人生最大の秘密をつくり、それを夫婦で半分ずつ背負うことを決める。(二人の秘密)
著者はあとがきで「私はどうも純愛というものが書けない。どんなに愛しあっている二人でも、駆け引きがあり、心の闇があるというのがかねてよりの私の持論である。このコレクションでは、作家としての私の意地悪さが最も濃く出ているはずだ」と記しています。読んでいて感じる、どことなく黒っぽいものは、著者の言う「意地悪さ」だったのかと納得させられます。
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