今年の読書(18)『最低。』佐倉まな(角川文庫)
4月
28日
あとがきによりますと、在学中にAV出演していることが学校中に知れ渡って、教師にほくろの位置や歯並びまで指摘され、「これはあなたですよね、いったいなにをしているんですか?」と詰問されたという。著者はひたすら別人説で否定し続けたが、まわりから浴びせられる好奇な視線に痛みを感じたそうだ。
AVに出演した女優が週刊誌のグラビアに載ることはあっても、また<永沢光雄>の『AV女優』(文春文庫)や<中村淳彦>の『職業としてのAV女優』(幻冬新書)などの著作がありますが、女優自らの文章で体験を語ることはほとんどありません。
登場する業界人や男のいいかげんさに比べて、女性のたくましさには驚かされます。家族に黙って女優活動を続ける<彩乃>。愛する男とともに上京した札幌・ススキノの女<桃子>。夫のAVを見て出演を決意した専業主婦<美穂>。AV出演歴のある母親を憎む少女<あやこ>。4人の女優をめぐる連作短編小説の構成になっています。