今年の読書(45)『きょうの日は、さようなら』石田香織(河出書房新社)
8月
26日
主人公の<キョウコ>は、母親を病気で亡くし、小学2年生になった夏、自衛隊に勤務する父が再婚します。再婚相手の<スミレ>さんは<キョウコ>の1歳年上の男の子を伴っていました。それが<キョウスケ>との出会いになります。
母を亡くして以来独りの時間が多かった<キョウコ>にとって、家族4人で過ごす時間は、日々の些細(ささい)なことでも美しく、かけがえのないものでした。しかし幸せな時間は長くは続きません。ある朝突然<スミレ>さんは借金問題のトラブルでいなくなり、そして独り残された<キョウスケ>も、<キョウコ>の前から姿を消します。
<キョウスケ>との再会は十数年後。父の元を離れ、従業員五名の「芝山商事」に勤め、職場近くのマンションで一人暮らしを始めた<キョウコ>のもとに、無頼な生活を送る「あかんたれ」となった義兄が突然現れます。
阪神・淡路大震災の傷跡残るオフィス街や歓楽街に接する下町を背景に、懸命に生きる兄妹や住民たちの姿が丁寧に描かれています。