今年の読書(68)『オ-シティ』木下半太(新潮文庫)
5月
19日
世界から集まるギャンブラーは、「オーサカシティ」を縮めて「オーシティ」と呼んでいます。
主人公は自称「絵本探偵」の<羽田誠>で、「死神」と呼ばれている悪徳刑事<愛染>から、闇金の取り立てができないときに相手の耳を切り落とすことから「耳切り茶谷」と呼ばれる<茶谷新一>が切り落としたインド人<サミー>の耳を探せと強要されてしまいます。
<羽田>は<茶谷>の彼女<小蘭>が隠していると出向くのですが、逃げられてしまい、見つけなければ<愛染>に殺されるのがわかっているだけに、必死のドタバタ活動が展開していきます。
<羽田>は2年前に離婚していますが、窮地になるたびに分かれた「妻」の言葉を思い出すのですが、これがいい伏線になり、最後に読者をニンマリとさせてくれますし、小説全体の構成も5章に分かれ、各登場人物の目線から物語を語る手法は、見事でした。