本書には、4話の短篇が納められていますが、表題作の『傍聞き』で、2008年日本推理作家協会賞短編部門を受賞しています。
『傍聞き』とは、「傍らにいて、人の会話を聞くこともなしに聞くこと」で、漏れ聞いた言葉は相手から直接聞いた言葉よりも信用されやすいという意味があります。
『傍聞き』は、強行犯係の刑事<羽角啓子>を主人公とし、4年前に同じ刑事だった夫を逆恨みした人物により轢き殺された過去を持ち、今は小学校6年生の<菜月)と暮らしています。
母と子の微妙な会話の葛藤、近所に起こる「居空き」事件、<啓子>が捜査しているストーカー事件とが並行して構成され、母子家庭小説とも警察小説とも、また人情小説とも取れる奥深い世界を築き上げています。
他の3篇も、「救急救命士」・「消防員」・「更生施設長」という自分を犠牲にしてでも他人を助けるという登場人物たちを主人公に据え、職能というプロ意識を主軸にミステリーが組まれ、どれも秀逸な作品に仕上がっています。
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