今年の読書(9)『カケラ』湊かなえ(集英社文庫)
2月
11日
元ミスユニヴァースの美容外科医の「橘久乃」は幼馴染みの「志保」から「痩せたい」という相談を受けます。カウンセリングの途中に出てきた話しは、太っていた同級生「横網八重子」の思い出と、その娘の「吉良有羽」が自殺したという情報でした。
母の作るドーナツが大好きで「デブ」や「ぶた」と呼ばれた少女の死をめぐり、食い違う周囲の人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声が描き出されていきます。「有羽」を追いつめたものは果たしていったいなんだったのか、ジグソーパズルのピースをはめ込むように真実を追い求めていきます。
美容整形をテーマに、周囲の目と自意識によって作られる容姿に対する評価の恐ろしさを描いています。SNSが広がる社会で、見た目へのこだわりが高まっている時代において、美の持つ力とは何か、幸せとは何かを問いかけ、一人の少女の自殺の謎を追う心理ミステリーです。
物語は「橘久乃」を主人公に据え、「吉良有羽」に関連する人物たちへ聞き取り調査を進めていきますが、文章は聞き取り相手の目線で語られ、「橘久乃」はあくまで聞き役で、自ら意見を語ることはなく、読み手に投げかける文体で読み進むのに少し疲れる展開でした。
読み進めながら2月5日(現地時間)の第65回グラミー賞授賞式において、歌手の<マドンナ>(64)が一見整形したかのような容姿に対してSNSで批判と嘲笑にさらされていましたが、「年齢差別と女性軽視の目に晒されている」と主張していたのを思い出しておりました。