今年の読書(3)『銀翼のイカロス』池井戸潤(文春文庫)
1月
11日
「帝国航空」のモデルは日本航空であることは言うまでもない。現実には銀行団が4000億円もの債権を放棄し、さらに公的資金が注入され、日本航空は再建されました。こうした再建劇を下敷きとしながら、著者<池井戸潤>さんの筆は縦横に走り、悪役も含めて魅力的な人間関係が描かれていきます。
<半沢>が勤める東京中央銀行は、旧東京第一銀行と旧産業中央銀行が合併して誕生したメガバンクです。本シリーズではお約束の銀行内部での不正と隠蔽工作、それにかかわる行内の暗闘もたっぷり描かれています。政治と金の絡みや銀行内のいざこざはすごくリアルです。
本作は<半沢>一人が活躍するというよりもチームプレイの勝利という印象が残ります。政財界がからんだ航空会社再建というスキームの巨大さ、複雑さに応じて、「半沢直樹」シリーズも変化せざるを得ないようです。