『殺人鬼フジコの衝動』真梨幸子(徳間文庫)
5月
18日
小学校5年生の<森沢藤子>は、教室内でいじめが横行する中、クラスの男子<K>から逃れようとして遮断機が下りている踏切を渡ろうとするのですが、追いかけてきた<K>は運悪く電車にはねられ死んでしまいます。
現場を目撃してあわてて家に戻ると、血まみれの母を見つけ、悲惨な一家惨殺の現場を見たショックから事件の記憶をなくしてしまい、叔母の<茂子>へ引き取られます。
深読みする読者はこの段階で、前段の<藤子>の行動からひょっとしたら犯人は「藤子?」ではと思わせながら、物語は進んでいきます。
宗教に信心している<茂子>は、ことあるごとに亡くなった姉のような人生を歩んではいけないと諭すのですが、いつしか<藤子>は「大人って、ちょろい」という考えを持ち始め、自分の生き方に邪魔になる相手を次々に殺害していくことを繰り返していきます。
殺人という悲惨な状況を、<藤子>の置かれた状況を克明に描くことで読者側にさも当たり前のように感じさせ、ラストでは「さて一家惨殺の本当の犯人は?」という余韻を読者に残こす最終ページの終わり方は、見事としかいいようがありません。