導入部は、同棲していた男と女が分かれることになり、明日は別々のところに引っ越す前夜、家具もない部屋で最後の時間を過ごす場面から始まります。
読み進むにつれ、1年前にS山地に一緒に出向いた際、現地のツアーガイドが事故死で亡くなっているのは、お互いに相手が殺したのではないかと考えているのがわかりだします。
亡くなったガイドは、二卵性双生児として生まれた男<高橋千浩>、女<高橋千明>が生まれる前に離婚した父親であり、彼は自分の子供がいることは知りませんでした。
<千浩>と<千明>が一年前の事故を振り返りながら交互に語る構成で組み立てられていますが、家族や兄妹などの愛情がいかにもろい綱渡りの上に成り立つのかという、疑心暗鬼の世界が垣間見れる一冊で、心理描写の巧みさに最後まで一気に読み通せました。
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