今年の読書(19)『家出してカルト映画が観られるようになった』北村匡平(書肆侃侃房)
4月
25日
本書『家出してカルト映画が観られるようになった』は、東京科学大学リベラルアーツ研究教育院で映画学、映像文化論といった研究分野の准教授を務め、これまでに『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社)にて第9回表象文化論学会・奨励賞受賞、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房)にて令和2年度手島精一記念研究賞・著述賞受賞。『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』(児玉美月との共著)などを執筆してきた映画研究者 / 批評家の<北村匡平>の初のエッセー集です。
日本経済新聞『プロムナード』の連載に書き下ろしを加えて書籍化されています。27歳のときに受験した大学のことや家族のこと、学生との会話で思うことなどがつづられています。
ここにおさめられたエッセイには、個人の人生の息苦しさと規範から逸れてゆく解放感、日常の些細なシーンにおける疑問や葛藤、そして怒りや歓び、あるいは非日常の時間に遭遇した、かけがえのない経験が記されています。社会が決める正しいルートなどない。多くの人が、他人にではなく、自分自身の人生を豊かに感じられる道を歩んでほしい、そういう願いが込められています。
作家の<伊藤亜紗>は「潔癖症なのに約30カ国を旅し、27歳でようやく大学受験。『リスク回避』・『コスパ重視』の社会が到来する前の時代、まだ若かった先生は、敷かれたレールをひたむきに踏み外していた。北村さんは、最後の『変な大人』なのかもしれない」と帯にコメントを寄せています。