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- 今年の読書(16)『六月の雪』乃南アサ(文春文庫)
昨年に著者のエッセイ紀行『美麗島紀行 つながる台湾』(新潮文庫)を読んでいますが、改めて本書の取材旅行ともいえる下地の内容だとよく分かり、解説文を含めて569ページの本長編作品に反映されています。まず先に『美麗島紀行 つながる台湾』を読んでから本書『六月の雪』を読まれることをお勧めします。
声優への夢破れ、派遣社員としての仕事も終わり、祖母「朋子」と二人で生活する「杉山未来」は32歳です。骨折した入院した祖母を元気づけようと、入院中の期間を利用して「未来」は祖母が生まれ17歳まで過ごした台湾の古都、台南を訪れることを決意します。
祖母の人生をたどるべく、一週間の台湾への一人旅。そのなかで「未来」は、日本統治後の台湾が、戦後に台湾の人々を襲った悲劇と植民地だった台湾に別れを告げた日本人の過去を体験していきます。
そして探し求めてたどり着いた祖母の生家らしき家で、「未来」は人生が変わる奇跡のような「劉慧雯(りゅうけいぶん)」の体験談を通して日本と台湾の関係に思いを巡らせていきます。
現地では、通訳として父の教え子であった〈愛想のない〉「李・華(りいか)」やため口言葉を喋る「洪春霞(こうしゅんかん)」が同行してくれますが、若い二人を通しても台湾と日本の関係が表現されていて、現代史としての教科書的な内容に感動する台湾旅情があふれ、最後に思わぬ悲しみが待っている作品でした。
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