今年の読書(35・36)『新装版 妖怪(上・下)』司馬遼太郎(講談社文庫)
4月
21日
今回も本書『新装版 妖怪(上・下)』が、前回(34)の<岩井三四二>の『金閣寺建立』が舞台となった応仁の乱(1467年~1477年)前後の時代が舞台で、<足利義政>が登場、不思議な縁を感じながら、金閣寺建設当時の時代背景を楽しみながら読み終えました。
<司馬遼太郎>の作品としては、骨太の武士や理想に燃えた歴史上の人物たちが主人公の物語とは違う傾向でした。題名から「ろくろ首」や「一つ目小僧」と言った妖怪が出てくるのかと思いましたが、足利将軍にまつわる権力争いに登場する妖術使いたちがいいキャラクターで脇を固めています。
怨霊や生霊の世界が身近にあった室町時代末期。6代将軍<義教>の落胤という熊野の「源四郎」は「将軍になろう」と、飢饉と戦乱で荒廃しきった京へ上ります。都では8代将軍<足利義政>の御台所、日野富子と、側室の今参りの局が権勢争いに明け暮れていました。その暗闘に巻き込まれた「源四郎」を、側室の「お今」に憑いた幻術師「唐天子」の奇々怪々な幻戯が襲い、「富子」を抹殺しようと企みます。
将軍<足利義政>の跡継ぎ問題を中心に正室「日野富子」に付く「山名宗全」と、側室「お今」の「細川勝元」との政治的対立を応仁の乱前夜を舞台として当時の世情を背景に京に徘徊する妖術師「指阿弥」や「唐天子」の世界を鮮やかに描いています。