今年の読書(62)『殺意・鬼哭(新装版)』乃南アサ(双葉文庫)
8月
19日
ナイフで相手を刺し殺した殺人事件を扱った二部構成で、前半「殺意」は、殺人を起こした「真垣徹」(36歳)の独白が語られ、後半「鬼哭」は、殺された「的場直弘」(40歳)の独白が語られていきます。
「的場」と「真垣」は、高校入試に際し「的場」が家庭教師を務めて以降の付き合いという人間関係でした。
「真垣」は殺人の動機に関して、殺意の発生や動機などを語ることなく、「なぜ?」そんなことが大事なのかと、読み手側として冗長的に思える長さで回想していきますので、かなり疲れる内容でした。後半も「真垣」のナイフで刺され倒れてからの「的場」の回想が始まります。
乃南ファンとしても、事件の当事者の心理を深く掘り下げるためでしょうか、「くどい」とも思われる心理描写が続き一つの事件が語られていきます。
殺人に「なぜ?」という動機の究明が「なぜ?」必要なのか、また「なぜ?」それが役に立つのかという問題を示した一冊だと思います。