今年の読書(32・33)『激流(上・下)』柴田よしき(徳間文庫)
4月
21日
中学生三年生、15歳の修学旅行として京都に訪れ、自由行動中のA組二班の7人でしたが、同じ班の<小野寺冬葉>が同乗していた路線バスから突然失踪する事件が起こります。 行方不明のまま、時は流れて20年後、それぞれの人生を歩んでいる当時のメンバーである人気歌手で流行作家の<秋芳美弥>、離婚問題を抱えている文芸誌の編集者<三隈圭子>や売春組織に関連している美人の<御堂原貴子>の元に 「わたしを憶えていますか 冬葉」という文面のメールが送られ、物語は不気味な様相で物語は始まっていきます。
20年前に失踪した同級生<冬葉>からのメール。それを発端に修学旅行で同じ班だった同級生たちに様々な事件が発生。その中で登場する同級生たちの現在の描写が丁寧に書かれ、読み手としては、ミステリーとしての伏線と謎に引き込まれていきます。
終章近くなってからは張り巡らせた伏線を回収するためでしょうか、事件を終結させるためにちょっと無理がある展開が気になる部分もありました。登場する2件の殺人事件全てが<冬葉>に絡んだ事件かと思っていましたが、<冬葉>には関連のない事件で終わりましたが、刑事になっている<東萩耕司>の性格付けとしての役割としての効果は出ていたようです。
事件解決までの流れは、どこに集結するのかと楽しみでしたが、結末への伏線が当初から出てこないだけにミステリーの基本を外している感じで、事件物の締めくくりとしては、納得ができませんでした。