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- 今年の読書(25)『新参者』東野圭吾(講談社文庫)
本書は、刑事<加賀恭一郎>シリーズとして『卒業」(1989年5月8日刊行)に始まり『赤い指』に続く第8作目(2013年8月9日刊行)となり、本作から<加賀>の活躍する舞台が「練馬署」から「日本橋署」に移動した1作目の作品となり、その意味によりタイトルの「新参者」となっています。
9章ある各短編が独立した性格が強く感じますが、事件を追う内容としては連作として構成され、章ごとに代わっていく主人公となる人物の視点を通じて<加賀>の捜査の意図が明らかとなり、彼が事件に直接関係ない周辺人物の小さな謎を解いていくうち徐々に本来の事件解決が浮かび上がっていく構成となっています。
日本橋小伝馬町で離婚したばかりの45歳の女性<三井峰子>が、マンションの自室で絞殺された殺人事件が起こります。日本橋署に着任したばかりの<加賀恭一郎>は、自身にとって未知の土地の日本橋を歩き回り、事件や被害者と何らかの接点を持った家族や店を丹念に訪れます。
<加賀>は事件に残されたいくつかの謎の解明のため、その謎に関わった当事者達の様々な想いを一つずつ解きほぐしていき、そしてそれらの解決を通じ絞殺事件そのものの真相にたどり着いていきます。
殺人事件とは関係ないと思われる、姑と嫁、親子関係、友人関係などの人間模様が下町としての日本橋界隈の風情を舞台として描かれていて、事件を解決するだけが刑事の仕事ではないという<加賀>の思いがよく伝わる内容でした。
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