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- 今年の読書(51)『春告げ坂』(小石川診療記)安住洋子(新潮文庫)
繊細で佇まいの美しい文章で人情の機微を描き出し、手触り感のある細部の描写が素直に伝わる著者の作品は、新潮文庫として 『日無坂』 ・ 『いさご坂』 と読んできており、本書が3巻目になります。
物語の舞台は、享保7(1722)年12月、将軍<吉宗>の時代に設立された「小石川養生所」を舞台に繰り広げられる短篇5篇が収められています。
主人公はお家のために詰め腹を切らされ、医師<高橋宗庵>家に5歳のときに養子に出された23歳の若き医師<淳之祐>を主人公に据え、病人の身の回りを世話する者たちとの交流と、不治の病の病人たちとの関わりを通して、彼の人間的な成長と医師としての成長が平行しながら描かれています。
藩の不正をただすために自ら切腹をした父<誠太郎>の気骨さが、息子の<淳之祐>にも通じる場面が多々あり、目先の利益を考えない一途な行動に爽やかさを覚えながら、気持ちよく読み終えました。
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