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- 今年の読書(138)『星月夜』伊集院静(文春文庫)
著者<伊集院静>としては、珍しく殺人事件を扱った推理小説は初めてだとおもいます。
浅草寺境内に年に一度開かれる行方不明の相談所に、岩手県から<佐藤康之>が23歳の孫娘<加菜子>の相談に訪れるところから物語は始まります。
そのころ島根県出雲市では、素封家に嫁いだ<滝坂由紀子>の元鍛冶屋職人の85歳の祖父<佐田木康治>が姿を消していました。
やがて東京湾の埋め立て地海岸で、若い女性と老人の遺棄死体が発見され、<加菜子>と<康治>だと判明しますが、二人の繋がりが分からず、疑わしき人物として<加菜子>の高校の先輩<高谷和也>が浮かび上がりますが、アリバイがあり捜査は難航を極めていきます。
片や宇部高専の同級生<宋建侑>・<乾康次郎>・<金本美智子>の人間関係が随所に盛り込まれ、殺人事件の背景が浮かび上がってきます。
殺人事件を扱う推理小説としては、刑事の活躍が主体になる作品が多いなか、地道な作業を続ける鑑識課の<葛西>巡査部長、捜査一課の<畑江>警部補の分析など、脇役の立場に回りいい味を出していました。
事件に隠された悲しい人間関係を主軸として、男と女の切ない友情と恋愛の交錯を根底に置き、読み終えた後でも登場人物たちそれぞれの叙情感がいつまでも心に響く作品でした。
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