『吼える遺伝子』霧村悠康(静山社文庫)
10月
6日
自殺か他殺かが不明のまま捜査は進みますが、科学捜査研究所顧問医<上月>が司法解剖を行ったところ、彼女は機能を果たす男性器と女性器を持つ体を持ち自家受精で妊娠、内臓は上下反対という驚くべき体内構造を持っていました。
彼女が呑みこんでいた紙片から、28年間閉鎖された病室に隔離された<西夢苑好子>との関連が浮かび上がり、今では地図上から名前の消えた「八火村」の存在が事件に絡んでいると考えた<上月>は、温泉旅行を兼ねて現地に出向いていきます。
解剖医としての<上月>は、村自体に遺伝子の異常もしくは化学物質での異常があるのではと、大学病院の遺伝学者<白神>に協力を求めて再度現地に足を向けるのですが・・・。
歴史ある閉ざされた村を舞台に繰り広げられる異形な人間の存在と、現代医学の遺伝分野を平行に描きながら、捜査する刑事が主役ではなく、解剖医<上月>の推理で事件の解決をみる、戦慄の医学ミステリーが楽しめる一冊でした。