『ほのかなひかり』森浩美(角川文庫)
10月
27日
夫を交通事故で亡くし小学生の一人息子を育てている母、娘が嫁ぐときに撮りためておいたビデオを、パソコン教室に通い自主制作でDVDを作成する父親、若い部下の退社に悩む部長等、何気ない日常の出来事を通して人生の機微を描き出しています。
どの主人公たちも切実に人生を生きながら悩み、笑い、喜びといった喜怒哀楽の中に、ささやかな希望を見出してゆく姿に感動を覚えてしまいます。
ちいさな温もりやちいさな優しさは、他人のみならず家族にも出しにくいモノですが、著者は誰の心にもあり、<たとえそれが どんなに小さくて頼りのない光であっても 歩む先に見えるのなら 人は生きていけるのです>という巻頭の言葉が、表題の所以です。