神戸残像(177)「神戸商船三井ビル」
6月
1日
地元『神戸新聞』の5月29日朝刊に、旧居留地(神戸市中央区海岸通5)の「神戸商船三井ビル」が、2027年6月末日でもって『閉館』するとの記事が出ていました。築103年のレトロビルなだけに、、老朽化で管理継続が困難とのことでした。
「商船三井ビル」と呼ばれることの多いこの建物は、1922(大正11)年に、旧・大阪商船(現・商船三井)の神戸支店として竣工しています。
設計はのちに「ダイビル本館」や大阪市に現存する「綿業会館」を手掛ける建築家<渡辺節>が担当。まだ20代の<村野藤吾>も加わっていたとされています。
当時まだ少なかった大規模集合オフィスビルで、建築資材の一部は船で海外から運んできたと伝えられています。
戦争、高度成長、バブル景気と崩壊、阪神・淡路大震災を経験し、震災後には当時の最新技術による耐震補強を実施しています。
竣工当時の姿を留める大正生まれの大規模集合オフィスビルとしてはほぼ「国内唯一の事例」とされ、高い評価を得ている建築物です。
現在は、1階部分が大丸神戸店のテナントとなっていて、他の階には企業・団体が入居しています。
これまで丁寧に管理・運営をおこなってきたものの「建築費高騰を背景に、老朽化に伴う修繕費や維持費の大幅増加が見込まれ、事業採算性を維持しながら管理継続することが困難であることから、賃貸の契約を終了し、ビルを閉館せざるを得ないとの結論に至りました」ということです。
閉館後どうなるのかは明らかになっていません。今のところ何らかの文化財には指定されていないものの、歴史的な価値も非常に高いということで、保存を求める声は多そうです。