今年の読書(58)『十三階の血』吉川英梨(双葉文庫)
7月
6日
警察庁の「13階」にある公安の秘密組織が『十三階』とよばれていますが、この組織は国家の異分子を排除すためには、ときに非合法な捜査も厭いません。この世界に、破天荒な女性捜査官「黒江律子」を主人公に据えたシリーズですが、本書ではその上司である「古池慎一」が主人公ともいうべき立場で〈驚愕〉の内容で、読者を最後まで楽しませてくれます。
通常シリーズ物は、単独でも楽しめるのですが、本作はあえて第1作目から読んでいただかないと感動の面白さが違うと思います。今年上半期の一押し作品でした。
成田空港建設反対運動と沖縄辺野古の埋め立て反対運動の歴史を複線として、班長の「古池」は過激派「第七セクト」の内偵に奮闘していました。十三階の本部長(校長)の「藤本乃里子」に頼まれて外交パーティーに出向きますと、そこには『十三階の神』事件で退職したとされているドレスにスニーカーの女、「古池」の恋人であり部下だった「黒江律子」がいました。公安のスパイ同士の恋愛・結婚、欲望と裏切りの幕開けです。
あとはネタバレになりますので、是非一読をお勧めしたい作品で、終わり方も〈驚愕〉でしたので、続編が楽しみなシリーズです。