今年の読書(83)『哀しみの余部鉄橋』西村京太郎(小学館文庫)
10月
25日
1973年(昭和48年)『赤い帆船(クルーザー)』(登場当時は警部補)で初めて登場した主人公「十津川省三」警部は、いつも40歳。日本各地を走る列車を舞台にした作品が多いのですが、本書には表題作を含む4篇の事件が納められています。
表題作の『哀しみの余部鉄橋』は、余部出身の「十津川」と同期の「高橋警部」がホステス殺しに絡む事件が扱われ、辺鄙な田舎町の象徴として、兵庫県美方郡香美町余部が登場しています。
「余部鉄橋」といえば、1986年(昭和61年)12月28日午後1時25分ごろ、風速33メートルを超える突風で回送列車「みやび」の7両が転落。 約40メートル下にあった水産加工場の女性従業員5人と車掌が亡くなった事故が思い出されますが、事故がうまく題材として用いられていました。
初代の「余部鉄橋」は、1912年(明治45年)3月1日に開通し、2010年(平成22年)7月16日夜に運用を終了しています。2代目の現橋梁はエクストラドーズドPC橋で、2007年3月からの架け替え工事を経て、2010年8月12日に供用が始まり、表紙写真のような鉄橋は今は見られません。また、2017年11月26日には、 「余部クリスタルタワー」 が完成しています。