今年の読書(81)『火車』宮部みゆき(新潮文庫)
10月
18日
第108回直木賞候補作であり、第6回山本周五郎賞受賞という作品です。ほぼ30年前の作品ですが、時代を感じさせる部分も当然ありますが、現代でも全く本質は変わらずに読めるのは、著者<宮部みゆき>の本質を見抜く力量のなせる技だと感じました。
事件捜査中の銃撃による負傷のため、休職中の刑事<本間俊介>でしたが、亡くなった妻の親戚で銀行員の<栗坂和也>が訪れてきて、婚約者の<関根彰子>が突然失踪してしまったので、探してくれないかと相談され、調査に乗り出します。
<彰子>の勤務先などを調べてゆく過程で、<本間>は<俊介>の婚約者は、クレジットカードローンで破産した<彰子>ではなく、別人物ではないかとの疑問を持ち始めます。
<彰子>と称するカード会社での犠牲者の凄惨な人生を抉り出し、一人の女性の人生の足跡を突き詰めてゆく<本間>でしたが、事件の全容が見えたときに、なるほどという余韻を残す場面で、物語は終わりを告げます。