今年の読書(1)『社長室の冬』堂場瞬一(集英社文庫)
1月
4日
日本新報記者である「南康祐」は、会社にとって不利益な情報を握る危険人物であるとみなされ、編集局から社長室へと異動させられました。
日本新報社は日本を代表する巨大新聞社のひとつですが、発行部数の減少により経営危機に陥っており、社長の「小寺政男」はこのままでは未来はないと判断し、外資系IT企業AMC社への身売り交渉を始めていましたが、突如急死してしまいます。九州に左遷されていた「新里明」が急遽後任社長に就任することとなり、売却交渉を引き継ぐことになります。
「南」は「新里」社長のもとでAMC社との売却交渉を担当することになります。交渉相手はAMCジャパン社長「青井聡太」、「青井」は20年前は日本新報の記者で、海外勤務の予定が反故にされて新設のメディア事業に異動させられたことから辞表を」提出した過去を持っています。 移動を命じたのは「新里」でした。
売却交渉は「新聞紙の廃刊」という条件で難航。「南」の同期の記者は会社に見切りをつけて続々とやめていき、また労働組合から会社OBであり個人筆頭株主である「長澤英昭」まで多方面から徹底的な反発を受けてしまいます。
日本新報社は「長澤」の嫌がらせや衆議院議員であり民自党政調会長である「南」にとって因縁のあるメディア規制に執念を燃やす「三池高志」が登場し、売却阻止が画策されますが、最後には「三池」も失脚する中、AMC社との売却交渉は破棄されてしまいます。このさきも 日本新報社の経営が不透明な状況なのですが、「南」は原点に返り再度記者としての道を歩み出そうとします。