本書の単行本は2007年11月に刊行されていますので、1917年1月25日生まれの著者として90歳の作品になり、おそらく最後の長篇小説の執筆ではないかなと見ています。
小学生ながら天才的な絵の素質を持つ12歳の<俊>ですが、祖母<松代>と伯母にあたる<紗江>と一緒に志木温泉に泊まりに出向いた際、ひとりで石仏をスケッチしに出かけますが、轢き逃げ事故に遭い亡くなってしまいます。
偶然その場に居合わせた議員秘書の<南原>は献身的な救助をしながら、警察に通報、<俊>が死に際に「めがねの男・・・」と言ったと担当の<土田>警部に伝えていました。
<紗江>は葬儀を済ませ、改めて現場に出向きましたが、<南原>の目撃談とつじつまがが合わないことを発見、彼が轢き逃げ犯でないかとの疑惑を募らせ、30歳で亡くなった姉の忘れ形見である<俊>に対して並々ならぬ愛情を注いできた<紗江>は、秘かに轢き逃げ犯の殺害を計画していきます。
本書で登場する<土田>警部は、本書の49年前に著した『天狗の面』(1958年)に登場する<土田>巡査の息子ですが、半世紀を超えての関わりは、著者のファンとしては懐かしく、またいい脇役として登場していました。
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