タイトルにある「先生」は、長崎出島のオランダ商館付の医師として来日した<シーボルト>のことですが、本書は彼を中心とした歴史小説です。
薬草園(植物園)を作るために依頼を受けた植木商『京屋』ですが、職人たちは紅毛碧眼の異国の雰囲気に怖気づき、園丁として出向いた15歳の<熊吉>が、愛妾<お滝>や使用人<おるそん>などとの生活を通して、「シーボルト事件」で日本を追放される(1829年:文政12年)までの4年間の交流を描いています。
母国に多くの日本の民芸品や動物などを阿蘭陀船で届けている<シーボルト>です。
特に植物2000種、植物標本12000種を送り出していますが、園丁<熊吉>の影の努力が丁寧に描かれ、当時の苦労を偲ばせてくれます。
愛妾の<お滝>を<シボルト>は<オタクサ>と呼んでいますが、新種の「アジサイ」の学名には、[Hydorange otaksa]と命名しています。思いつくだけでも、「ミセバヤ」 ・ 「ギボウシ」 ・ 「サクラソウ」 など、学名に<シーボルト>の名を冠した植物は多々あります。
年老いた<熊吉>のもとへ、<お滝>の娘<以弥(いね)>が訪ねて来て、<シーボルト>を回想しながら終わる場面は、「お庭番」としての<熊吉>の矜持がよく出ていて、ほんのりとした気分で読み終えれました。
- ブログルメンバーの方は下記のページからログインをお願いいたします。
ログイン
- まだブログルのメンバーでない方は下記のページから登録をお願いいたします。
新規ユーザー登録へ
投稿日 2016-01-07 09:15
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2016-01-07 20:32
ワオ!と言っているユーザー