終戦の翌年の夏、<久我恵三>の5歳の一人息子<勇一>が誘拐され、犯人が金の受け取りに指定したのは有楽町の闇市であるカストリ横丁でしたが、大勢の刑事が張り込みながら、闇市取締りの日と重なり犯人を取り逃がし身代金100万円を奪われてしまい、<勇一>も発見されませんでした。
時効寸前の15年後の昭和36年を舞台に、25歳の家政婦<下条弥生>が絞殺死体で発見され、住まいは何者かの手により家探しされていました。
運送会社に勤める<谷口良雄>は、入院先の病院で母<貞子>を亡くし、母思いの息子でしたが葬儀のときから様子がおかしく、恋人であり母の担当であった看護婦の<杉村幸子>は原因を問いただすと、死ぬ間際に母が「お前は誘拐された・・・」と言い残したことを知らされます。
自分の出自に疑問を感じた<良雄>は<幸子>と二人で、母の過去を調べ始めます。
二つの事件が並行に語られ、やがてひとつに収束される構成が見事で、さすが第54回江戸川乱歩賞受賞作だと感じながら読み終えました。
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