『誘拐児』翔田寛(講談社文庫)
8月
28日
時効寸前の15年後の昭和36年を舞台に、25歳の家政婦<下条弥生>が絞殺死体で発見され、住まいは何者かの手により家探しされていました。
運送会社に勤める<谷口良雄>は、入院先の病院で母<貞子>を亡くし、母思いの息子でしたが葬儀のときから様子がおかしく、恋人であり母の担当であった看護婦の<杉村幸子>は原因を問いただすと、死ぬ間際に母が「お前は誘拐された・・・」と言い残したことを知らされます。
自分の出自に疑問を感じた<良雄>は<幸子>と二人で、母の過去を調べ始めます。
二つの事件が並行に語られ、やがてひとつに収束される構成が見事で、さすが第54回江戸川乱歩賞受賞作だと感じながら読み終えました。