『花散らしの雨』<みをつくし料理帖>髙田郁(ハルキ文庫)
10月
18日
付け火で主人<種市>の蕎麦屋「つる家」を焼失してしまいましたが、<澪>は屋台見世で正月を乗り切り、二月の初午の日に九段坂に新しい店を構えました。
2階建となり武家屋敷も近く、2階座敷は武家専用としての使い分けを行いながら<芳>や<おりょう>に手伝ってもらいますが手が回らず、<ふき>という13歳の少女を下足番として雇い入れます。
新規の客として戯作者の<清右兵衛門>が常連客となり、心を寄せている<小松原>にどこか似ていて、<澪>は会話を楽しんでいます。
両親を亡くしている<ふき>や、<おりょう>の息子<太一>が風疹に罹りと、親と子の愛情問題を絡ませながら、<澪>の行方不明だった幼馴染の<野江>が吉原遊郭の翁屋の<あさひ太夫>と確認できたりと、市井の人情噺を下地に季節感あふれる料理に打ち込んでいく<澪>の姿が生き生きと描かれていました。