今年の読書(53)『十三階の母』吉川英梨(双葉文庫)
9月
2日
待ちに待ちました第4作ですが、圧巻の読み応えで読み終えました。シリーズ物としては、前作を読まなくても文中で大体の流れが把握できる小説が多いとおもいますが、このシリーズだけは、第1作目からの読書をお勧めします。
前作で結ばれ公安諜報員同士夫婦となった「黒江律子」と上司の「古池慎一」は、首相の娘「天方美月」の恋人「儀間祐樹」を殺害したことにより、狙われてアメリカに逃亡し、長男「慎太郎」と共に束の間の平和な生活をいとなんでいました。
そんな時、十三階のトップ「藤本乃里子」のもとに時限爆弾が届き、事態は急変、急遽「慎太郎」を元諜報員〈アオジ〉に預け、日本に帰国します。
「十三階」(=公安部)を潰そうとする黒幕を追い求め、過去の新幹線爆破のテロリストが再活動という情報で、「黒江律子」は新幹線爆破の被害者「鵜飼真奈」を潜入捜査員として活動を始めますが、おもわぬ方向に展開していきます。
乳飲み子の我が子と切り離された「黒江律子」は、母として、女として、妻としての葛藤の中で、黒幕を追い求めていきます。
将来の総理大臣を狙い「十三階」つぶしに執念を燃やす「天方美月」との対立、それを操る「佐倉隆二」たちとの決着もついておらず、その後の<慎太郎>との関係も気になりますが、すでに第5作目の『十三階の仇』が2022年5月19日に刊行されていますが、文庫本発売まで待ちたいと思います。