今年の読書(11)『護られなかった者たちへ』中山千里(宝島社文庫)
3月
5日
仙台市内で誰もが口を揃えて「人格者」だと言う、仙台市の福祉保険事務所課長「三雲忠勝」が、身体を拘束された餓死死体で発見されます。周辺捜査では「三雲」は誰からも恨みを買うような人物ではなく、怨恨が理由とは考えにくく、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げてしまいますが、県警捜査一課の刑事「笘篠誠一郎」は、残酷な殺害方法から怨恨の線が捨てきれません。
続いて、人格者とまで言われている県会議員の「城之内猛瑠」が連続して「餓死死体」として発見されます。捜査の過程で「三雲」と「城之内」は塩釜福祉事務所での同僚だったことが判明、その過程で事件の数日前に、塩画家福祉事務所で暴行事件を起こし事務所に放火した「利根勝久」が仮出所しているのが分かります。
「笘篠」は必要に「利根」の周辺を捜査していきますが、殺害された上司の「上崎」が次なる標的だとにらみ、「利根」を追い詰めていきます。
生活保護問題に絡めたリアルな現実問題の社会福祉と人々の正義感が交差したときに見えるものは何か、著者<中山千里>の巧みな構成に、思わず「あっ!!」と真犯人が浮かび上がる文章の巧みさと、伏線の巧みさにも驚く一冊でした。