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- 今年の読書(45)『花や散るらん』葉室麟(文春文庫)
「時に元禄十二年十二月十四日、江戸の夜風を震わせて・・・」の語りが入る<三波春夫>の『俵星玄蕃』(1969年)は、赤穂浪士の討ち入りが主題で、私の大好きな歌のひとつです。
本書は、赤穂3代目藩主<浅野 長矩>と高家の<吉良上野介>との「忠臣蔵」とも呼ばれる「赤穂事件」の流れを中心に据え、京の郊外で静かに暮らす元水戸徳川家奥女中取締役の「咲弥」と「雨宮蔵人」という架空の夫婦を登場させ、江戸幕府と京の朝廷との対立を伏線とする、武士の心意気を描いた作品です。
標題の「華や散るらん」は、能の「熊野」に出てくる「いかにせん都の春もおしけれど馴れし東の花やちるらん」から引用されています。
「華やちるらん」の言葉に著者は、男女のこころの結び付きや夫婦・親子の絆、そして武士たる者の矜持を端的に表し、「赤穂事件」という史実に沿わせ、自らの思い描く人の世の世界を見事に構築させた作品だとおもいます。また、「赤穂事件」の裏の世界を知りえた貴重な時代小説でもありました。
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