『バベルの末裔』赤井三尋(講談社文庫)
11月
17日
<シャドウ>は生前に本人の記憶を写し取り、脳内の意識回路の発火システムを組み込むことにより、死んでも永続的にコミュニケーションが図れる画期的な技術で、2022年に<アークス>と命名、650人のモニターを募り、実験データーの収集に当たります。
知らぬ間に<アークス>は、コンピューター内部で650人の個人データー同士が疑似社会を構成、子孫を残そうとする意識を持ち始め、東京証券取引所の株価操作や信号機の停電などコンピュータにロジック爆弾を仕掛け、日本政府に不可侵条約の締結を求めてきます。
<ゲーデル>の「不完全性定理」を基本に据え、コンピューター社会の近未来を描く本書は、コンピューター依存社会の警告書として楽しめました。