今年の読書(34)『花は桜木 人は武士』鈴木周平(星湖社)
3月
18日
大阪府生まれで神戸市で育った著者らしく、多くの時代劇は「江戸」を舞台としていますが、本書は上方の「大坂」や「京」を舞台として、本書には7篇の短篇が収められています。
8歳のときに親に売られた娘<お房>は、<陸奥>という源氏名の花魁になっていますが、ふとした縁で唐物屋の<半四郎>と知遇を得て、江戸に住む両親と再会する『天神祭の女』に始まり、浪花の森で惨殺死体が発見され、見慣れぬ銀銭から長崎まで出向いた同心が突き止めたのは、船の難破で財産を失った「鹿島屋」の娘の企みだった『ぴしょんの女』まで、庶民の喜怒哀楽と、武士の矜持を描いた作品が楽しめました。