『最後の一球』島田荘司(文春文庫)
7月
10日
横浜にある<御手洗>の事務所に、山梨県の山奥から<廿楽(つづら)泰>という青年が、母親の<芳子>が自殺未遂をした原因を探ってほしいと訪問、現地に出向き母親との会話で、悪徳金融業者「道徳ローン」の借金が原因であることを突き止めます。
突如場面は、子供の頃に借金苦から父親を亡くした「ぼく(竹谷亮司)」の、貧しい生活からプロ野球を目指す人生物語が始まります。
契約金なしでプロ野球団に投手として入団、あこがれの天才打者<武智明秀>のバッテイング投手に生きがいを感じていた<竹谷>ですが、突然<武智>が野球賭博で逮捕され、その原因が自分の父親と同じ「道徳ローン」の借金が絡んでいることを知ります。
プロ野球の世界が丁寧に描かれており、これが前半の部分とどうつながるのか訝りながらも、二軍で終わった投手と天才打者との心の絆を絡め、タイトルの「最後の一球」の意味がジワリと心に響く面白さでした。