『きみはポラリス』三浦しをん(新潮文庫)
3月
13日
短篇集の場合、収録されている作品名からタイトルが付けられる場合が多いのですが、本書は例外で、著者の隠された意図があるのかなと読み進めました。
「ポラリス」とは2100年前後数世紀の間の「北極星」を意味する言葉で、『冬の一等星』の文中に<ほの白い一等星のように、それは冷たいほど遠くから、不思議な引力をまとっていつまでも私をまもっている>という一文があり、恋する女性の心の一面が語られています。
11話の短篇は、同性愛、年齢差、三角関係、片思い、ペット等、規定できない「愛」と「恋」のパターンが組み合わさり、<言葉で明確に定義できるものでも、形としてこれがそうだと示せるものでない>関係ながら、<ひとは生まれながらにして恋を恋だと知っている>という視点でまとめられています。
星の数ほど無限に「恋愛」関係は成り立ち、また見渡せることのできない宇宙の果てと同様に、奥深い神秘な感情であるのだと、著者は示唆しているのかなと感じる一冊でした。