1962年北九州市に生まれた著者のようですが、初めて手にした一冊です。
小説ではなく、「怖い話」をまとめたエッセーに近い形式ですが、飽きずに楽しめました。
文中にも出てきますが、広告の営業や水商売、デザイナー、コピーライター、専門学校講師など、さまざまな職歴を経験されて、2000年『再生ボタン』で作家デビューしています。
各章が、「怖い食べもの」「怖い会社」「怖い虫」と、<怖い>というタイトルが付けられ、その話題に関する事例や知識が楽しめます。
わたしは、「怖い酒」という章に魅せられて手にしてみました。
著者自ら酒飲みであると自認されていますが、<健康というのは、ひとつの思想であって、かくあるべしと一律にくくれるものではない。健康健康と、朝から晩まで体調を気遣っているほうが病的ではないか>には、ごもっととですと相槌を打たざるを得ません。
また病気に関しても病院には行かないと断言し、<医師が診断するまでは、病気ではない。医師が診断するから病名がつく>には、笑わせていただきました。
話しのネタとして雑学的にも内容が濃く、気軽に読むには面白い一冊だと思います。
大学生の<真柴徹>は、健康診断で尿に大量のタンパク質が出ていることが発見され、女医<若松>の指示通りCTスキャンなどの検査を受けますが、腎臓自体に悪い所は見つかりません。
ふと以前、高額な報酬に吊られ参加した治験のアルバイトのことを思い出し、当時一緒に治験に参加した<火野美紀>と共に、アルバイト先の調査を始めますが、すでに撤退した後で真相は解明できません。
<若松>の協力や、同僚医師の<小松>の分析でタンパク質の分析にたどり着くのですが、昔の同僚医師がガンに効く成分として研究していたものだと判明します。
人間の体を薬の製造工場として利用するという発想で、尿に出たタンパク質成分を凝縮させる研究です。
<火野美紀>の父親は末期ガンで、危険と知りながら父を助けるべく、再度このタンパク質の製造に協力をしてしまいます。
実際に人体を用いての薬の開発は行われていないと思うのですが、臓器類を生活の為に売る現状では、あながち作り話だとも笑えず、一気に読み終えました。
特に大きな問題もなく、節電対策でこの夏を乗り切れた電力状況でした。
インフラとして電気はいつでも使えるものだという延長に、蛇口をひねれば安全な水が出るという生活も、当たり前だと信じられています。
本書は、水不足が起こっている近未来のサスペンス小説です。
水道事業で全世界制覇を狙う「WE(ウオォーター・エンバイロメント)社」の野望に立ち向かうべく、地底社会の「水の国」の戦士ともども、主人公<海原剛士>が立ち向かう物語です。
2025年には世界人口の60%が水不足に悩まされるという報告もあり、石油問題と同様に水資源の問題も深刻に考えざるを得ません。
水の豊かな国としての日本ですが、エネルギーの代替えは技術や研究で補えるでしょうが、水の問題だけは代替え品が効かにだけに、危機感を感じながら読み終えました。
著者お得意の医療分野のミステリー小説です。
単行本としては、同じ双葉社から2008年7月に刊行されており、 以前に読みました 『潜伏』(小学館文庫) よりも出版は早いのですが、文庫本化は遅れました。
ひとつの職業に居付けない主人公<宮野正志>は、失業保険の手続きで寄ったハローワークで、アメリカで開発された健康食品「マックス・イミュノ」の日本代理店にならないかと、一人のアメリカ人に声を掛けられます。
ガンに聞くという触れ込みで、年収1千万に引かれ、持ち前の気軽さで引き受けてしまいます。
飼っている愛猫がどうやらガンらしいと友人の獣医から指摘され、気休めに「マックス・イミュール」を与えるのですが、死んでしまいます。
友人の獣医の指摘から、「マックス・イミュール」は毒性があるのではと感じた<宮野>は、真実を追い求めてアメリカまで渡ります。
普段無責任な生き方をしている<宮野>ですが、他人を巻き込んでまでお気軽人生を歩む気はない一本気があり、予想できない行動も面白く、展開を楽しみながら読み終えれました。
正直好きな文章ではなく、いつもより読書のペースが落ちましたが、何とか(下)巻を読み終えました。
(上)巻で殺人事件が起こり、(下)巻でも、続けて二人の<人類協会>の会員が殺害される事件が起こります。
推理小説ですので、細かいことは書けませんが、最後は英都大学推理研究会の江神部長の推理で、犯人を追求、11年前に起こった迷宮入りの密室自殺事件とも解決に至ります。
(上)巻を読み終えた <コメント> でも書きましたが、不必要と感じる(知識の見せびらかし)的な台詞が多く、わたし好みの推理小説の構成ではありませんでした。
奇しくも文庫本のあとがきに、・・・私の書くものにありがちなのだが、前半は物語の展開がゆるやかだ。そのために上巻が<静の巻>、後半が<動の巻>といった趣になっている。上巻を読んで「動きが少ない」と不満を抱かれはしまいかと案じるが、どこで物語が弾けるか、<静の巻>にどれだけ伏線が貼られていたのか、最後までお読みいただいて、「なるほど」と納得していただけることを祈る・・・、と著者自ら書かれていました。
有栖川ファンとしては、この流れがいいのでしょうが、わたし的には「なるほど」という感想もなく、ただ読み疲れが残りました。
よほどのことがない限り、著者の作品からは遠ざかりそうです。
初めて手にした有栖川有栖の作品でしたが、有栖川ファンの方には申し訳ありませんが<歯切れのない文章>で、なかなか読書のペースが進みませんでした。
上下2冊本ですが、ようやく435ページの(上)巻を読み終えました。
会員数を伸ばしている新興宗教<人類協会>の本殿がある神倉に、英都大学推理小説研究会の先輩が突然訪問に出向いたことを心配して、後輩メンバー4人が探しに出かけます。
神倉では、11年前に迷宮入りした密室殺人事件があり、いまだ殺害方法も犯人も検挙されていないことを、研究会のメンバーは宿泊先で知ることになります。
紆余曲折がありましたが、何とか本殿にて先輩を見つけることができますが、突然教会内部で殺人事件が発生します。
事件がおこった場所は、開祖が宇宙人と出会った洞窟の前で、宇宙人が再臨するのを24時間体制で見張っている警備員が殺害され、何かの原因で警察との関わりを避けたい教会側に、研究会メンバー達が本殿に監禁されるところで(上)巻は終わります。
この研究会のメンバーが主人公のシリーズのようで、4作目に当たるようですが、初めて読むには登場人物たちの性格設定が甘く感じられ、人物像が浮かび上がりません。
迷宮入りした事件と絡み合うのは予測できますが、ダラダラとした描写ばかりが続き、筋のテンポが面白くありません。本筋と関係ある台詞なのかもしれませんが、知識をひけらかす饒舌な会話の場面が多く、疲れました。
まだ(下)巻があります。結末までどのように展開するのか、なんとか読み終わりたいと思います。
本来は、2011年9月に公開予定だった映画の小説ですが、城に対する「水攻め」の場面があり、東日本大震災の被害を考慮し、公開延期になりました『のぼうの城』です。
ようやく今年の11月2日に公開されることに伴い、原作本を読んでみました。
著者の作家デビュー作であり、第139回(2008年上半期ノミネート)、2009年には第6回本屋大賞第2位を受賞した作品でもあります。
天下統一を狙う豊臣秀吉は、関東最大の勢力を持つ北条氏の小田原城をつぶそうと考えます。北条側は、関東各地の支城の城主に対して、秀吉に対抗せよと命を出しますが、「忍城」城主の成田氏長は北条氏に従うように見せかけ、裏側で秀吉側に降伏の密通書を送り届けています。
武功として名を立てるために石田光成は2万の兵力で、すでに氏長が降伏しているとは露知らず「忍城」に向かい、明け渡しを要求しますが、留守を預かる<のぼう=でくのぼう>と呼ばれる成田長親は、裏で降伏していることなど知らせられていないため、兵士500と農民たちを合わせたわずか2千の数で戦に臨みます。
<のぼう>様と呼ばれた長親は、田植えが好きで兵法も知らず、武術も出来ませんが、農民からの「人望」を背に受け「忍城」を守り抜きます。
城の留守を預かる、長親を取り巻く<正木丹波守>・<柴崎和泉守>・<酒巻靭負>たちという脇役の活躍が素晴らしく、小気味の良い流れで、一気に読み切れました。
犯罪と称する分野にも、色々な分野があります。
この本は少しばかり機転の効く主人公<世間師>(偽名ばかりを使い名前はその都度かわる)と、『Xファイル』に出てくる女性調査官<ジリアン・アンダーソン>に似た、少し太めで美人のジリアンこと<四面堂遥>の二人が織りなす、「コンゲーム」の短篇集です。
「コンゲーム」とは、相手の信用を勝ち得て、それを旨い事利用しながら、相手から金品などを奪い取る犯罪で、地道に仕組まれた詐欺とも言えます。
読み手側も、登場人物が詐欺師だと分かっていながら、結末を予測することはできなく、著者の筋書きの巧さに舌を巻きました。
『相棒に気をつけろ』に続く続編ですが、今回は骨董屋の未亡人として<二本柳ツル>が新しく登場、渋い役どころで楽しませてくれます。
機知とウエットに富んだ登場人物の活躍、笑わせてくれる一冊です。
新鋭作家として『凍て鶴』が、日本クライム文学賞を受賞した<待居涼司>に、作品の映画化の話が持ち上がります。
監督・脚本・主演に選ばれた奇才<小野川充>は、彼独自の理論を展開し、原作とは違う結末に、かって世間を騒がせた「落下の会」という自殺系サイトを主宰して自殺した<木ノ瀬蓮美>のイメージを持ち込もうとします。
<小野川>にこの「落下の会」の調査を受けたフリーライターの<今泉>は、情報やデーターを駆使して、この「落下の会」の元幹部との接触に成功しますが、思わぬ結末を迎えることになります。
「落下の会」の元幹部として生き残っているのは、読者に作家の<待居>か脚本家の<小野川>かと推測させながらの展開は緻密で、飽きさせません。
作家と脚本家という夢と野望が絡み合い、人間の「業」としての急転直下の結末に唖然とするとともに、納得できる怖さが余韻として残りました。
保守派の論客としてつとに有名な<櫻井よしこ>さんですが、出生からジャーナリストになるまでを綴った自伝です。
ベトナムハノイの野戦病院で二女として生まれたときから、ジャーナリストの冷静な目線で持って、ご自身の生きざまをルーツを織り込みながら書かれています。
日本テレビの『NNNきょうの出来事』のキャスターを、1980(昭和55)年5月から1996(平成8)年3月まで16年間務められました。
この本を読んで、なぜ彼女が「ハワイ大学」の卒業なのかがよく分かりましたし、この時の留学時代に養われた異国での経験、民族や文化の違いが、ジャーナリストとしての素地として、よく理解できました。
そして何より、タイトルの「何があっても大丈夫」は母親の口癖の言葉ですが、父親が家庭を顧みない中において、気丈な母として子供を育て上げてゆく姿にも、感動を覚えました。
核武装論者、慰安婦問題、薬害エイズ問題をはじめ、教育・政治にと多弁な活動をされていますが、その源が垣間見えた一冊でした。
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