今年の読書(41)『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』坂本龍一(新潮社)
7月
4日
死期を悟った<坂本龍一>からの提案で始まった本企画では、音楽制作や舞台芸術について、また<吉永小百合>や<SUGA(BTS)>をはじめとする著名人との交流など、聞き手として編集者・ジャーナリストの<鈴木正文>が担当して、幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』の2009年を継ぎ、最晩年までの活動を闘病の様子も交えながら自らの言葉で振り返り足跡を未来に遺す決定的自伝です。
本書では<鈴木正文>が「著者に代わってのあとがき」を記しており、そこには生前の<坂本龍一>がパソコンやiPhoneにつけていた日記の一部も引用されています。
日記には手術を受けたあとの気持ちなどがつづられたほか、YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)でともに活動した<高橋幸宏>が死去してから約1カ月後の今年2月18日には「NHKの幸宏の録画見る/ちぇ、Rydeenが悲しい曲に聴こえちゃうじゃないかよ!」と記されていたといいます。
単行本カバーに採用されたのは、<坂本龍一>が療養のために訪れたハワイで出会っ90年以上年以上前に作られたピアノの写真です。彼はこのピアノをアメリカ・ニューヨークの自宅に持ち帰り、「自然に還すための実験」と称して庭で野晒しのままにしてきたといいます。そのほかにも、本書には東日本大震災後の「津波ピアノ」との出会いなど、自然と人間の関係についてのエピソードが、たびたび登場しています。